親しらず

 そういや20代のころにはやたらと(といってもふたりだけだけど)頬の片側を腫らしているひとたちを見かけていたものです。「なんで?」と問うと、「親しらずを抜いてきた」との答え。へえ、親しらずってこわい(つーかめんどくさそうな)もんだなあ、と鏡の前で大口を開け、「ああ今のところは生えてなさそうだ」と確認してほっと胸を撫で下ろしていた日々から早いもので10数年。
 最初、血豆でもできたのかと思いましたよ。いや頬の内側に。今回の尋常ならざるくしゃみのし過ぎで。もしくは朝食べたパンでも挟まってるのかなあ、とかね。で、これはもしかすると……と手鏡を使って上の歯を確認してみたところ——ありましたねえ。前から数えて8番目。白いタケノコの頭のようなものが、こんもりと。立派な親しらずです。上の奥歯の更にその奥って、文字通り「死角」で。今まで、ちっとも気がつきませんでした。
 どうなんすかね? 抜いた方がいいのかな? 抜くひと抜かないひとといろいろいるらしいのだけれど、今のところは痛みはないので、このまま放置しておいても平気なのかな?
 実際、ちょっと歯医者行って見てもらった方がいいのかもなあとは思いつつも、なんとなくおっくうで。歯石を取るといっても、最近はわりにていねいに歯みがきに時間をかけるようになったので、そうはないし。と、ウグイスの声を耳にしながら、もんもんと煩っているここのところであります。