ミニマリズム

 世の評判との齟齬を感じる、というほど大げさなものではないのですけれど、江國香織の『いくつもの週末』というエッセイ集と銘打たれつつも、その実——フィクションなのかノンフィクションなのか判然としない本をぐうぜん読んで、むしろ、このひとの代表作と目されているものより、こうした、その周辺に位置されている本の方にこそその凄味を感じ取ったりもしてしまうのです。いや、『東京タワー』は大好きですけれど。そして、この『いくつもの週末』ははたして江國香織の代表作のひとつでは「ない」のかという話があるのも認識してますけれど。

いくつもの週末 (集英社文庫)

いくつもの週末 (集英社文庫)

 ミニマリズム、ってことばをけっこうな頻度で耳や目にして、それでも、いまだにその正確に意味するところを掴み切れてない自分としては、江國香織の代表作と目されている作品群にかならずしも惹かれないという理由の一端をこのことばが担っているのかもしれない——とは思いつつも、やっぱり、ミニマリズムの語義を体感として掴み切れていないので、ここらへんの様相は、相も変わらず漠とし続けているのでした。つまり、江國香織とビッグなものってのはどうにも(自分的には)相容れないのかもなあ……ということなんですけれど。単に、メディアミックスってのからこぼれ落ちている(逆にいうと、それでは掬い取れない)ものの方がその凄味をぞんぶんに堪能できる、ということなのかな? ことばとしての。つまりは1冊の本としての。