ウェールズの左

 左手で民草に手を振る天皇をあなたは想像できるか? と問われても、天皇の利き手になんて興味を持ったことなどいちどもなかったし——当今はもともと左利きだったとWikipediaに書いてあるけれど(しかし「とうぎん」と入れてもATOKですなおに変換されないのはどうして?→)——いままで気を付けて見たことがなかっただけで、意外に使ってるんじゃないすかねえ。左手。どうなんだろ?
 で、ここで、「意外に」というフレーズが出て来てしまうところからして、少なくともぼく自身においては、天皇が——というか皇族が左利きってのは、ちょっと想像の埒外って感覚の持ち主らしいということに気付きます。別におかしな偏見を持っているわけじゃないんすけど。左利きに。(つか、そもそも自分もそうだし。)「右翼」とかいうことばに無意識のうちに縛られているからか? なわけないか。
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 日本の皇族の利き手に興味を持っていなかったくらいだから、イギリス王室の利き手情報になんてそれこそ触れ得る機会もなかったのだけれど——触れ得ていたとしてもそれをそれとしてきちんと認識する意欲も湧いてこなかったのだけれど——いやいや、この『左利きの子』ってイギリスの本。懇切丁寧な実用書。すごいっすね。ぼくはこの本を読んで、生まれてはじめて、ハサミで紙を切る正しいやり方を知りました(左利き用のハサミは所有していても、その使い方を完璧に誤っていたのだ)。世界を見る目が変わった。きちんと線に沿って切ることができるという事実に驚愕……って、あまりに遅すぎる話ではあるのですけど。

左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために

左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために

 全小中高校で、必携して欲しい(少なくとも、図書室では各校最低1冊常備して欲しい)。
 で、この本を読んで、ああ、かの地では、ヴィクトリア女王チャールズ皇太子もウィリアム王子も、ふつうに(かどうかは知らないけど)左利きとしての生活をまっとうできてるんだねえ……ということに感じ入ったというか何というか。
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 どうなんすかね? 皇室が誘導する文化ってのは現在でも存在してるのかしら? いや、ですから、日本の皇室でも左利きでふつうに生活していることをロールモデルとして提出すれば、我々庶民の間に根強くはびこっている左利きへの偏見の閾値も、いまよりかは下がるんじゃないかなあ……ということを、こうした本を読んだりすると想像してしまうというわけで。
 ——まああくまで想像っす。勝手に、イギリス王室における左利きへの処遇とこの本の革新性とにパラレルなものを見出しただけという話であって。いわゆる「国民性」ってところにすべて落ち着くのかもしれないし。(お上主導ではなく、こういうのって、「名誉革命」とかと同じ流れで捉えるべきなのかもしれないし。)イギリス王室を見倣おうとか、そういう野暮な議題をふっかけているつもりでは毛頭なく。
 左利きを許可したら、かの地同様、離婚に対するストッパーも弛んでしまうのかもしれないし。←とか考えているひとたちがいるから、もしかすると左利きってその存在をほぼ無きものとして扱われているのかな?
 関係ないか。(でもあったりして。)
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 まあでも例えばトイレでのバリアフリーのバーが片側だけ、ってのは、かなり使いづらいと感じるひとが一定量以上いることが忘れられたら困る。と言った方が、もしかすると現在では有効かな? いやこのまえ切実にそれ思ったので……。