手を見るな

 一体どういう感じがするんですかね? もし橋本治芥川賞を取ったら。こういうことをさりげなく示唆されると思い出されるのが昨今だと「スーザン・ボイル」なる女性の例なのだけれども——射程概念からの逸脱具合が微妙に似ている気がする——まあここは素直に、「そうなったらとてもおもしろいなあ」と呑気にいっておくにとどめます。あくまでぼくの中で。
 ついついこの手の妄想は爆走して自分でもブレーキがきかなくなりそうにはなるんですけど。「お米3杯はいける」ってやつっす。
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 買いましたよ。
Mister Babache/ミスターババッシュ社 ビーンバッグ 【ハンディサイズ】 白赤 ジャグリングボールMister Babache/ミスターババッシュ社 ビーンバッグ 【ハンディサイズ】 白青 ジャグリングボールMister Babache/ミスターババッシュ社 ビーンバッグ 【ハンディサイズ】 白黄 ジャグリングボール
 ジャグリング用のボール。正式名称「ビーンバック」。結局ハンズでは売っていなくて博品館まで足を運んでの購入。赤青黄、とまるで信号機のような組み合わせで。
 こういうことを、やるわけです(→)。カスケード。しかし、不器用にかけてはかなりに自信があるので、そうはかんたんにできるようにはならない。ボールが手からこぼれ落ちる落ちる落ちる。我が身の無能を、しんけんにのろいたくなってきます。
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 そこで出会った、この記載。太字は、わたくしの処理。

 右手のボールを左手に向かって投げます。ボールが中間点に達したら、左手のボールを、最初のボールの下を通るように投げます。ボールの高さは2つとも同じです。手を見てはいけません! ボールの位置を目で確認するのは、ボールが軌道の頂点に達したときだけにして、あとは手が自然に動いてボールを取るようにします。

 教科書はこれだ。
ボールジャグリング百科
 繰り返します。手を見てはいけないのです。
 用心して、見つめることでしっかりとボールが受け取れるようになるかと思いきや、逆に、焦りを醸し出す結果にしかならないという……なかなかに示唆に富んだ事態と相成っているわけです。こうした場においても。
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 というわけで、思い切って、極力手を見ないようにして(←けっこうな勇気が必要)、ぽちぽちと繰り返していくにしたがい、現在は、なんとか、ボール3個までなら「手が自然に動いて」床に落とさずに受け止められる、かな、という具合にまで進行中。
 うれしいかぎりで。
 ここでこういう比喩を持ち出すのは順当だと思うのだけれど、はじめて自転車に乗れたときのような、はたまた、はじめて浮き輪なしで泳げたときのような、「あ、できた!」という移行感覚をこの歳になって追体験することになっているわけであります。
 とはいいつつ、まだ両手をイーブンに動かすというところにまでは達成していないのですが……。←現在の課題。次回書くときには、もっと先に進めていれば(個人的に)たいへんよろこばしい。

たまたま たまが ころがる
たまが いつつで たまご
あ、 たまが ころがる
あたまが ころがる

by 多和田葉子