引用の「ママ」

「ママがこわい」といったら楳図かずおのマンガとしての認知度が高いのだろうけれど(←読んでいなくても知っている)、ぼくが毎回こわいなあ、というか不気味だなあと思うのは、本の引用文に「これは誤字」という印としてルビの形を借りて存在している「ママ」の存在っすね。
 ママ(引用):→

 読み手に対して、著者・編者が見のがした誤植等ではないこと、あるいは全体の引用規則に従って引用したことなどを意思表示する。

 本の著者とは関係なく、これって校正の管轄なのかもしれないのかもしれないなあとは自覚しつつ、読んでいる本の中でこの「ママ」に出会すと、それまで読んでいたトーンとはまるで位相の異なる自己主張を著者からされているように錯覚し、そういう(ある意味)意地の悪いことをしそうもない人柄の場合、たいへんに戸惑う……というか、単純に、それこそ文脈も何もかもを無視して、唐突に毎回顔を出すこの「ママ」という字面そのものがぼくには不気味なのです。
 どうしてカタカナなんだろう? なんか呪術っぽいぞ。
 生まれてはじめてこの「ママ」に出会したとき、ふつうに「マザー」としての「ママ」を連想しましたからね。でも意味は通じない。もちろん、ふりがなとしても機能しない。何なんだ? という、その時の不条理感が未だに尾を引いているのかもしれない。
 21世紀に入ったことだし、もっと万人に判りやすい別のマークを考案すればいいのにね、とここで僭越にもいうことはできますが。「符丁」だもんなあ……。