前口上
土曜日から読売で連載が始まる水村美苗『新聞小説 母の遺産』における、水村氏の前口上をメモ的に。
- 「ふつうの大人の男女が楽しめる作品をめざします。かつて尾崎紅葉や夏目漱石が書いていたような市民小説を」
- 「ヒロインは少し不幸でなければ面白くない。でも、ドラマを追いすぎると本当らしさを失う。作者の私にとって“大事なこと”を惜します入れて、現実味を出したく思います」
- 「漢字、平仮名、カタカナ、ローマ字……書き言葉としての日本語は、世界に誇れる機能的かつ陰影豊かな言葉です。インターネットの影響もあり、日本の小説も英語に翻訳されやすい文章が優勢になりつつありますが、作家なら今こそ時流に抗し、日本語の特質を存分に活用する挑戦をすべきでしょう」
- 「ニューヨークで紅葉の『多情多恨』を繰り返し読み、故国を懐かしんでいた私が、日本近代文学へ恩返しをするために、努力すべきときかもしれませんね」
あと、作中にも登場する作者の母の「美貌」の写真も、なかなかに盛り立てる効果をこちらの周囲で発揮している模様。