下唇

『オーランドー』って過去に2回読んだことあるけど、評判が芳しい割りに正直どっちでもいまいちぴんと来なくて。だもんだから自分とバージニア・ウルフってのは相性があまりよくないんだなと勝手に思ってた節があったんだけれど、今回新たに訳された『ダロウェイ夫人』(→)、いや、ほんとよかったっす。堪能しました。こちらの好みをストレートに突いてきて。(ウルフに)カルトなファンが多いってのもようやく頷けた。
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 訳者は土屋政雄で、氏があとがきで触れていた「にっくきヴ」(日本語の中での「V→ヴ」表記問題)の文章も、上のとはまた別種のこちらの好みをストレートに突いてきて、1粒(というか1冊)で2度も3度も美味しいとはこういうことをいうのだなと実感した次第。:だもんだから「ヴァージニア・ウルフ」とは打たず土屋氏に敬意を表して上でも「バージニア・ウルフ」と打ってみた。けれど、字のバランス的には、「ヴァ」という形にもそれ相応の魅力は付随している気はちらとする。
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 ちょっと続き。こんなこというと怒られるかな。でも書いてみる。個人的な感覚では、「バージニア」と「ヴァージニア」を比べると、「バージニア」の方が間抜けに見えるんだ。「ヴァージニア」と書いても「バージニア」としか発音できないことは承知の上で。間抜けというか。
「分かる」と「判る」と「解る」みたいなものかな。音は同じなんだけれど、でも受け取るイメージには歴然と差があるし。何やかんやいって、音は同じなんだけれど、「バージニア」と「ヴァージニア」じゃ内包している意味も実のところ歴然と異なっているのかもしれない。←別に土屋氏に反論しているわけでなく、ただ何となく思ったことを書いてみた。:その「意味の差」の中にある種のしゃらくささ(西洋偉い、みたいな)が付き纏っているように見えるのが、ここでの問題を複雑にしているのかな?
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 馬鹿の派生語:バーカとヴァーカ。これのふたつには意味だけではなく発音にも歴然と差があるような気がします。ヴァーカの場合、Vの発音作法に則り(日本語であるにもかかわらず)下唇に前歯の先がきちんと接している…ぼくだけか?