T・オブライエン「世界のすべての七月」*15 

 ふう。この前の「サザエさんうちあげ話」でも思ったのだが、人というのは、50を越えても惑い続けるものなんだなあ。「69年度卒業生」という同窓会での逸話を挟み、そこに出席している人々の物語を綴る。脚をなくした人、癌に罹っている人、心臓に故障を抱えている人。ああ、あのころはみんな若かった。とそんな単純な話でもなく、むしろセンチメンタルとは縁がない。なぜって、ある意味、現在進行形の話であるから。台詞がいちいちチャーミング。「幸せな僕の膝。幸せな僕」「それが私の習性なわけ」「五つ子はちょっと困るけど」「あっと驚く占い師」。にしても、「同窓会を間に挟む」形式は、こうした“昔語り”をする上で非常に有効だなあと思った。感情移入が「垂れ流された」場合の比じゃないもの。アイディア賞だ。訳者村上春樹も<60年代に青春を送った世代の、長大なクロニクルのようなものを書くことができれば>と意欲を燃やしている。是非やって欲しい。そしてまた印税稼いで下さい。