ピンチョン的

 素顔を隠している作家といって真っ先に思いつくのはもちろん今だと舞城王太郎になるのだろうが、けっこう「いしいひさいち」も狙い目ではないだろうか。「世界のすべての七月」に、女性を口説き落とそうと、世間に顔を知られていない(しかし高名ではある)作家の名を騙る男の話が出てくる。そこからの連想。しかし、「実は、オレ、いしいひさいちなんだ」という告白に色気を感じる人間が存在するのかという問題はある。ポジション(知名度・隠匿性)としては絶妙なのだが。舞城王太郎だと読者の範囲が限られる気がして。そっちのほうがおもしろいかな?