小川洋子「博士の愛した数式」*6

 前評判のあまりに高すぎる本に手を出すのはやっぱりちょっと気後れするところがあるのだけれど、この本はどうやら読んでおいた方がいいとの判断を下し先日読了。なるほどなー、受けるわけだよなあ。8時間しか記憶の続かない数学者との1年に満たない交流を描く。えー、でも障害者を使ったお涙ちょうだいの話だろと正直思ってた節もあり。しかし、まあこれは小川洋子の勝利ですね。よく出来ている、なんて感想を凌駕する出来だと認めざるを得ないっす。出だしの数ページから、もうなんか“気高いオーラ”が漂っていたからなあ。10歳の少年ルート君の賢さをけっこうリアルだなあと思いながら読み進める。ぼくも昔は・・・なんてのは幻想か。人知れず埋もれてゆく天才って像に多数が共鳴した為の支持率?とゆーより、ここで描かれている人とのつながりに同調した流れが生み出した秘かなブームってとこなんでしょうか。第1回本屋大賞ってのも、なんかかわいらしくていいですね。