トゥー・ブラザーズ

 そういえば先日、「らくだの涙*1という、小泉吉宏の恐竜マンガに出てくる小学生たちが学校で見せられたのと同じ映画をBunkamuraで見てきたのでした。子らくだの育児を放棄した母らくだに、プロのつま弾く馬頭琴*2の音色を聞かせると、あら不思議、彼女は涙をうっすらと浮かべ、その後はかいがいしく自分の子供の世話にいそしむようになったのです。感動的だね。しかし僕は、この母らくだの涙より、生まれたての子らくだが、人から無理矢理たづなを付けられる際に嫌がって浮かべた涙の方に、より心を動かされてしまいました。もらい泣き、しちゃったよ。まあ、元来、哺乳類の子供ものには弱いのだ。
 というわけで、「どれ、虎の子供でも眺めて、心安らぐひとときを送らせてもらおうかな」と臨んだ「トゥー・ブラザーズ」*3だったのですが、うーん、いざ見終えてみると、「これ、子供たちに見せるのけっこうヘヴィーじゃないかなあ」という感想を抱くに至る。いや、虎の子供たち、十分可愛かったんですよ。そこは楽しめる。楽しめるのだけれど、何と言うか、主題がかなり「楽しむ」といった方向とは相容れないものを含んでおりまして。ある種、教育映画だったのかなあ。サングラスをかけたら金正男に激似の殿下が、捕えられた虎の子供に語りかける場面があります。「お前も、私の父と同様、人の敬意を得るために、残酷さが必要だと思うかい?」*4う。うーん。このセリフ、結局映画内では否定される結末を迎えるのだけれど、現実世界にフッと思いを巡らせてみると、「人の敬意を得るための残酷さ」というのが、かなりあちこちに跋扈しているような気がし始めて、まあそれで、二重に疲弊した、というのもあります。逆に、子供たちは、そんなしち面倒くさいことに頭をつかわず楽しむことができるのかもしれません。

*1:http://www.klockworx.com/rakuda/

*2:参照。馬頭琴の由来(→)。「スーホの白い馬」です。国語の教科書でやりましたね。覚えてましたか?僕は忘れてました。

*3:http://www.herald.co.jp/official/two_brothers/index.shtml

*4:ちなみに字幕は戸田奈津子。彼女が選ぶにしては、まあずいぶんと地味な映画だ、と出だしでは思ったものの、案外、戸田さん、心底惚れ込んでこの仕事名乗り出たのかも。