津島佑子「ナラ・レポート」

ナラ・レポート
 母と息子が何度も転生しつつ、その都度、前世の記憶は微妙なかたちで残されているから、彼らの悲劇は終わらない。と、そのように一見感じられるのだけれど、物語の最後に再び出てくる大仏の姿から、「単純なループは断ち切られた」と判断してもいいのかもしれない。この大仏を、何かのメタファーとして考えるのはそれこそ野暮なんだろう。
 ところで、中頃に出てくるジンソンとアイミツ丸のエピソードが、なんだか僕には光源氏と紫の上の関係に重なって見えました。32歳の青年と15歳の少年のラブアフェア。10年後にアイミツ丸が××××するところなんて、実にそっくりだ。