江國香織「間宮兄弟」

間宮兄弟
 今まであまり彼女の小説には食指が動かない方だったのですが、これには正直、感服。めろめろ。さすがに、うまいものだなあと感心。食べ物のつかい方とか。女性の書き分け方とか。もう少し、叙情的な文章を書く人かと思っていたのに、そんなことはないのだね。(いや別に叙情的な文章でも、おもしろければいいのだけれど。)全体に、通常主人公足り得ない登場人物が主人公になっているとそれだけで点が甘くなる嫌いになることは認めつつ――なんてったって、もてない30代兄弟が主人公だからね――ここに描き出されている世界に、思い切り心なごむひとときを見出したり。……とかいって、もしかすると江國さん、この小説で顧客の新規開拓を計っているのか?(はまったか?)