カタルシス的

 昼休みに星野智幸「在日ヲロシヤ人の悲劇」(「群像」1月号)読了。ふう。濃い小説でした。題名になっているのは登場人物のひとりが綴った文書名で、特に、彼らの悲劇が前面に押し出されているわけではない……と、思っていたのだけれど、ああ、確かに「悲劇」かなあ。はっきりと「悲劇」なのは、日本人たちの方で、だから、ちらりとこの題名でよいのかなあと思ったりもする。家族崩壊の記。不思議と、いやったらしい感じは受けませんでした。時系列にかなりの工夫が施されているからかな。星野智幸の小説に出てくる人って男女を問わずわりかしセクシーだと思うのですが、いかがでしょう。
 そして帰りの電車で村田喜代子の「科学の犬」(同上)を読む。この人の文章を読むのは今回がはじめて。「メッタ斬り!」で豊崎由美が褒めていたのでね。興味を持った次第であります。いやー。上手い、なんて言葉で対応できないほど、上手い小説ですね。犬ネタだ。しかも、迷子犬。文章がいちいち心に染みこみます。犬を飼ったことのある人なら、最後の箇所で泣かずにいるのは難しいだろう。