山崎ナオコーラ「人のセックスを笑うな」

人のセックスを笑うな
 うう。うまいっすね。うまいのだけれど。うーん。もう少し(題名やペンネームから)笑いのある小説かと思っていた。そこのところは、ちと肩すかし。まあ勝手に期待する方が悪いのですが。
 日経新聞11月4日にこんな文章が載っている。引用しよう。

「無駄な文章が一文もないのが理想。甘みが詰まった、堅いアメのような小説をいつか書いてみたい。(言葉をすくい取る)網を日々編むよう心がけてる」

 でもこれ、「群像」1月号でのエッセイによると、甘みではなく、純粋に「飴」というメタファーにこだわっているようっすね。ナオコーラさんは。

 物に触るとき、絵を見るとき、小説を読むとき、どこかにある遠いものを想像するのではなくて、目の前にあるものを嘗め尽くしてやる、という気持ちで臨みたい、と考えている。形而上のどこかに何かがあるように思うより、実際に感じているものを受け止めたい。

 ふーん。この考え方じゃあ、広告なんてのとは相性悪かろうなあ。ていうか、「山崎ナオコーラ」「人のセックスを笑うな」という見事なコピーに絡め取られた自分は何? という話でもありますが。