橋本治サイン会レポート

 八重洲ブックセンターでエレベーターを待っていたら、後ろから橋本治がやって来た。あ。これは先日(12月14日)の「橋本治 トーク&サイン会」が始まる前の話。だから別に、氏が来てても不思議はないのです。でもなあ、ほんと、驚いたよ。一般の客が使うのと同じエレベーターに乗るのかあ。他に、出版社の人かな、5人ほどの中年男性が同乗。中のひとりが杖を突いていて、「なんかさあ、杖を突いてるこの人が一番偉そうに見えるよね」と、橋本さんはにこにこと語っておられました。(後に、この人は集英社の担当編集者と判明。)
 にしても、橋本治、やはり背が高いなー。洋服は思いきり普段着(茶色のトレーナーにジーンズ)でしたが。なんてったって、前日までふつうに執筆活動していたようだからね。観客の方も、わりかし地味な印象でした。地味というか、シックというか。若い女の子にしても、眼鏡をかけた、スタイリッシュといった感じの人ばかり。全体に、男女を問わず、中高年の方が多かったです。
 トーク会のテーマ「家庭がない上司と女たちへ」。これ、編集者が勝手に決めてしまった代物らしい。「だから困ってんだよね、ほんと」と、橋本さんはここでもにこにことと語っておいでで、それでも終わってみると、このテーマに沿った話をきちんとしていたのだから、驚くというか何というか、すごいっすね。何より、1時間弱、途切れなく喋り続けていられたってこと自体にいちばん驚いたかも。ヨン様に萌える女性たちへの言及もしてたよ。というか、彼女らを育てた母親についての言及かな。個人的に、そうした「橋本節」を目の前で見られて、ちょっと感激。いますかね、他に、あの中年女性たちの母親にまで話を広げられる人って。
 トーク会の後のサイン会は、けっこう淡々と進みました。確か橋本治中野翠との対談で「作家に直に会いたがる人って気持ち悪い」みたいなこと言ってなかったっけ。けれども、わたしの前にいた女性(60歳くらいかな)は、こうしたサイン会の常連らしく、「いつもありがとうございます」と橋本治に丁寧にお礼を言われている。言われている女性も、「いえいえ、お疲れのところ・・・・・・」と丁寧に返し、目の前で、熟年男女の恐縮合戦が繰り広げられたという次第であります。
 握手は、できなかった。つーかちゃんとお礼も言えなかったよ。さすがに少し疲れ気味に見えたので。ま、エレベーターで同乗できたからいいか、ってところで。