「パッチギ!」

 井筒和幸監督作品です。先週の日曜日、シネカノン有楽町で観て来ました。人の入りは、さすがに「誰も知らない」ほどではなかったけれど、でもけっこう混んでましたよ。題材が、1968年の京都を舞台とした、在日の女の子と、日本の少年との恋愛模様、というくらいだから、受ける範囲は広いと捉えても差し支えないでしょう。実際、中学生くらいの親子連れもちらほら見かけたし。
 個人的に、1968年の雑多な風俗の波(エッチなやつじゃないよ)に揉まれて、大満足。「マタンゴ」なんて単語、この耳で聞くことができるなんて思ってもみなかったよ。あの時代特有の、ちょっとダサい、でもそう切り捨てるには何かこうためらいがある、愛くるしい雰囲気は決して嫌いではないのです。ダサかわいい、とでもいおうか。
 それと、やはりこの映画の眼目は音楽ですよね。舞台が京都、というのが功を奏したのかもしれない。これが下手に都内だったりしたら、バックに「悲しくてやりきれない」が流れても、白けてただけかもしれないから。京都の、ちょっと寂れた風景と、妙に合うのです、あの時代の音楽は。それこそ、メインテーマの「イムジン河」にしても。主人公の塩谷瞬が、ラジオ局でこの曲を歌うシーンで、涙を流さなかった観客は果たしていなかったのではないかしらん。
 以下、蛇足です。ヒロインの、沢尻エリカちゃんがフルートを吹く演技に、感服。ふつう、むつかしいと思うのですよ。素人があの楽器を上手に持つのって。前に、某アイドルグループの女性が、ドラマのエンディングでフルートを吹いている際にも、そのあまりの痛々しさぶりに、思わず目を覆ってしまいたくなりました。その点、今回の彼女は大合格。すごいっすね。まだ18歳なのに。って、演技に年齢は関係ないか。