川上弘美他「恋愛小説」

恋愛小説
 サントリーと新潮社が手を携えて作った短編集、といった趣です。実際、読んでいる最中、ああ、ウイスキーが飲みたいなという欲求に苛まれること請け合い…って、これはあくまで、あまり酒を嗜まない者の意見であり、ほんものの酒好きの手にかかれば、どのような感想が飛び出るのかは不明だけれど。それから(まあ謝ったほうがいいのかな)すいません、ぼくは普段慣れ親しんでいる川上弘美よしもとばななの小説しか読んでないです。いやー、こういう切り口で他の作家の小説を読むことにはどうも抵抗があり…。評判が良いようなら、折を見て眺め返す予定ではあるけれど。
 にしても、この2作品(「天頂より少し下って」と「アーティチョーク」)を続けて読むと、何かこう、川上・よしもとの資質の違いがはっきりと浮き出てきて、味わい深いですね。きちんとした落ちのない川上と、最後に(いちおう)救いのあるよしもと。ふむふむ、と感心しつつ、どちらの世界も、心行くまで堪能しました。気持ちよかったです。でも、やっぱり、この本って、男子禁制なのかな?色々、指摘してみたくなる箇所があったもの。この2人のファンであるぼくでさえ。恋愛小説というジャンル自体、そもそも女子専用のターム?とかいいつつ(しつこいか)面白かったのだけれどね。内容云々より、語り口が気に入れば、もうそれで八割がたオッケーというのは、要するに、マンガにおける「内容より絵柄」に通ずるものなのかも。