細雪(中)

特に筋がない、というのが「細雪」の定説となっているようだけれど……そうかなあ? 中巻で、にわか浮上してきたのが、四女妙子の恋愛模様。ははあ。若かりし頃駆け落ちまでして(しかも、新聞にまで書きたてられまでして)、いちおう現在も付き合っている金持ちの男と、大洪水の際、自分の命も顧みず助けに来てくれた、しがないカメラマンの男……。さて、彼女は、どっちを取る? てな興味が、けっこう読む進める力と化してました。(まあ、最後に決着は付いたんだけど。)例によって、豪奢な描写による引力もかなり強烈なものがあります。そして、次女幸子は、妹たちの起こす騒動になんだか不眠症気味で、一晩中眠れぬ夜を過ごすこともしばしば。というか、この「一晩中眠れぬ夜」ってのが、やたらとこの巻で目立っていたような気がします。自分ならとても耐えられそうにない。金持ちというのもけっこう大変なようです。