彼女(たち)に関する私の知っている二、三の事柄

ふう。ひさびさです。小説を読んで徹夜したのなんて。いやー、おもしろすぎるなあ金井美恵子の文章は。単なる30歳女子無職(いちおう塾講師のバイトをやっている)恋人なし目黒在住の淡々とした生活を描いているだけ、とも取れるわけだけれど、えーと、これまた最近読んだミラン・クンデラカーテン 7部構成の小説論』(小説論というより、原題通りエッセイに近い)にあるように、<忘却にふさわしい私たちの現実世界にたいして、芸術作品は一つの別世界、どんな細部にもそれなりの重要性、意味があり……>みたいな感じで、どんどんどんどん細部細部で攻めてくる。たまらないなあ。こういうのって、ペダントリックって言うのかな? 衒学的。つーか、話題が食に映画に小説に女に男に恋愛に、そしてとりわけセックスにまで及んでるんだから、まあこちらの好みのツボをもろ押しまくり、というわけで。ちょっと河合隼雄に言及した箇所には笑った。確かに、援助交際なる単語が流行っていた頃は、子供より親にしか受けてなかったものなあ。ああ、あと、「仮分数のデコ」なるニックネームのセンスとかにもね。彼がテストで一番を取れなくてヒステリーを起こす場面など、いたいた、こういうやつ、なんてちょっと追体験してしまいました。こうしたフィクショナルな懐かしさというのは、確かに快楽における大きな要素を占めるものだな、と改めて実感した次第。芳醇な小説世界を、こころゆくまで堪能した気分。これの前編となっている『小春日和』も、もちろん近々読みます。(惚れモードに入ったかな?)