乱世を生きる ―市場原理は嘘かもしれない (集英社新書)

『「わからない」という方法』、『上司は思いつきでものを言う』に続く、橋本治集英社新書シリーズ第3作。対象は、やっぱりサラリーマンということになるのだろうけれど、うむむ、前2作よりもふくざつな内容だったなあ。扱っている題材が、経済ということで、説明も煩を極めていたような。そのせいかな、この本では、あまり文章から来るスピード感を楽しめなかった気がします。単に「ですます体」だからというだけでなく。
ただ、毎度おなじみ橋本治の本を読むと、何らかの形で背中を押されるというのも(自分にとっては)事実なわけで――。少なくとも、「我慢」についての分析は、かなり目からうろこでした。そうだよな、あまり欲望ばかり肥大させてもしょうがないもんな、みたいな、軽い悟り状態に入ったりしてね。(すぐまた煩悩の徒に逆戻りするかもしれないけど。)
ところで、橋本治も、団塊世代が大量リタイアした後には、何らかの形で戦略を変化させてゆくのでしょうか? 新書需要、けっこうありそうだしなあ。それこそ、彼の言に倣えば、リタイア後の団塊は「フロンティア」(立派なマーケット)だもんね。あ、もちろん、金だけの話じゃなくて。

「人と人との間に感情が循環することによって、幸福な現実が生まれる。それが一人の人間の人格形成に大きく関与する。そしてその人間は、“経済というものは金銭的な損得とは別のものである”ということも知る」(略)自分で言うのもなんですが、これはいたって高度な「精神的経済活動」なのです。(P.114)