文章教室

おっと。これはずいぶんと、文体がこなれている印象があるので、てっきり最近の作かと思いきや、意外や意外、上の「小春日和」よりも前に書かれた小説らしいです。金井美恵子、37歳の作。(先と同様、刊行時の年齢です。)目白4部作の、ああ、これこそが第1作目になるのですね。「小春日和」の方が、なんだか、第1作のような雰囲気がありますが……。と、いうわけで、過去に大興奮して読んだ「道化師の恋」に出て来る登場人物たちに、再びお目にかかることができました。文章教室に通う主婦の文章を、間に挟みこんで展開する小説です。ただ――ああ、文句ばかりで申し訳ない――、ちょっとなー、どういうわけだか、金井美恵子の繰り広げる諧謔に、今回はあまり同調できなかった自分がいたりして。確かに、十分おもしろかったのだけれど、やや、救いがなかったというか……。あまり好きになれない人物(主人公ではなく)が、ピックアップされ過ぎていたせいかもしれません。

文章教室 (河出文庫―文芸コレクション)

文章教室 (河出文庫―文芸コレクション)