愛の生活/森のメリュジーヌ

金井美恵子のデビュー作「愛の生活」を含む、10編からなる短編集。ふふー。これはすごいなあ、とふつうに「愛の生活」には興奮しましたね。んんー、1967年の作か。(ちなみに、当時彼女は19歳。)つまり、この時代が醸し出す特有の空気にばっちりやられた、ともいえるのだけれど、なんだかねえ、わたしは、岡田史子の作品を思い出してしまいましたよ。ちょっと、イメージの中の「フランス映画」っぽい。そうした、懐かしさをも含む「いいなあ」という感じ。意外に、こうした擬似ノスタルジックって、貴重なんです。最近。「アカシア騎士団」という、男子校での秘密結社について描かれた短篇なんて、ううーん、まんま、山岸凉子の世界だもんなあ。――と、なんだか、アプローチの仕方がかなり邪道だけれど、まあ、金井美恵子の初期作品集としてより、アングラものとして楽しんだ節が多分にあります。はい。(「サーカスの魅力」とでもいうべき?)兎殺しの描写なんて、かなり鬼気迫るものがあったしなあ……。

愛の生活・森のメリュジーヌ (講談社文芸文庫)

愛の生活・森のメリュジーヌ (講談社文芸文庫)