軽いめまい

金井美恵子描くところの、特にドラマチックなことの起きない専業主婦の日常生活。
「文章教室」での主人公より、はるかに著者・金井美恵子のパーソナリティを髣髴とさせる主人公でした。
主人公との年代が近い、ということもあるのだろうけれど、ああ、わかるなあ、その怒り、と、やたらに感情移入したりしてね。
(少なくとも、こちらの主人公は、まかり間違っても文章教室に通おうとは思わないだろうな。)
こんなに怒りっぽい妻に、よく夫は逆ギレしないなあ、と感心もしたり。
ところで、毎日のルーティンから来る軽い狂気のようなものを、いちおう、専業主婦に特化される出来事として描かれているようにこちらには感じられたのだけれど、そして、そこに対するフォローはあまりなされてなかったように思えたのだけれど――そうした態度こそが、金井美恵子の矜持なのかもしれないけれど――最後の解説で、そこのところに堀江敏幸がかなりうまい具合にフォローを入れていて、うーん、うまいなあ、というか、優しい人だなあ、と感じ入った次第であります。
まあ別に専業主婦でなくても、軽い狂気のようなものには、それこそ現代誰とも無縁ってわけじゃないだろうしね。

軽いめまい (講談社文庫)

軽いめまい (講談社文庫)