ほだされて

 地元ヴィレッジヴァンガードのプッシュにほだされ、ためしに藤枝静男の「悲しいだけ」を買ってみたよ。川上弘美が、「ゆっくりさよならをとなえる」の中で連綿と恋情を綴っている「田紳有楽」は、かなりにハードルが高そうだったので敬遠したんだ。なんてったって、登場するのが、金魚のC子、だからねえ。わけがわからないよ。その点、「悲しいだけ」は、割にふつうに付き合えそうな気がしたもんでね。

 私は仰天した。こんな小説がこの世にあったのか。なんだこれは。どうしたらいいんだ。

 当時高校の先生だった川上弘美は、友人教師から朝礼前に「田紳有楽」を借りて、<あんまり仰天したので授業には十分以上遅刻した>と書いてるよ。(「ゆっくりさよならをとなえる」より。)ふーん。そういや、笙野頼子も、「おんたこめいわく史」で藤枝静男ラブって書いてたしなー。魔性なのかな?