朝の荒俣

 偶然通りかがったテレビで荒俣宏を久々に見て、ちょっと驚いた。あくが抜けたなあ。と。でもこのあくというのもあくまでぼくが心の中だけで長年育成していた仮想のもので、実際の荒俣宏はこの前ぼくが見たときと同じような感じでずっと爽やかに生を満喫していたのかもしれない。
ーーーーー
 生の荒俣宏は1回だけ見たことがあるよ。原宿での横尾忠則の本のサイン会に突如登場して(でもって横尾忠則と楽しそうに喋ってて)。生の荒俣宏を見て誰もが感じるであろう感想を、そのときぼくも抱いた。「なんて背が高いんだ」と。
ーーーーー
ゲゲゲの女房」は見てません。見てないけど、先月ラジオで京極夏彦が披露していたキャスティング裏話にはけっこう笑った。水木しげるに、自分の役に誰がいいか娘さんが訊いたんだって。それに対する、翁の答え。「荒俣がいいんじゃないか…」。
 いいなあ。朝の荒俣。でも、このときのぼくの心での荒俣宏は現実の荒俣宏よりも確実に濃い(あくの強い)イメージでしかなかったものだから、あくに関する心内修正を終えた現時点においては、この「いいなあ」の意味合いも微妙に異なってくるというもので。
「背の高さでは(ヒロインの女優と)釣り合ってる」とラジオでは大いに盛り上がっていたけれど、意外に、真面目に、「若い頃の水木→現在の荒俣」という図式は、そうは悪いものではないような気もしてくる。相手役を規定するのがもしかすると大変かもしれないけれど。少なくとも、「水木役の荒俣が出てくるドラマを見てみたい」と思う人間がここにひとり。出来れば、朝という時間帯を死守した形で。