ゴーゴリ「外套/鼻」*1

 19世紀半ばの小説。ドストエフスキーが「我々はみなゴーゴリの『外套』から出てきたのだ」と言ったとか言わなかったとか。ドストエフスキー云々はともかく、今回この本を手に取ったのは、ずばりジュンパ・ラヒリの「その名にちなんで」(→)が面白かったから。あの小説には、この「外套」が重要な役割で登場し……。って、詳しい言及は避けますが。あ、あと毎日新聞柴田元幸が(ロシアの小説なのに)ベタ褒めしてたのも大きいかな。
 講談社学芸文庫のこの本は4編から構成されてます。表題作「外套」「鼻」、加えて「狂人日記」と「ヴァイ」。やはり一番面白かったのは「外套」だな。「その名にちなんで」での主人公の心理を思うと、その面白さは否応無しに倍増されます。苦労して買った外套が追い剥ぎにあって……という、一見くらーい話ではあるのだけれど、後味は全然悪くないです。「鼻」「狂人日記」というのは、どちらもマルキの作品として受け止めた。手紙のやり取りをする犬とか、馬車に乗る鼻とか……SF?つーかギャグとして読める。いやテーマはけっこう悲痛なのだが。管理社会に翻弄される男の悲劇?(紋切り型かな。)ファンタジーにはいまいち馴染みがないので「ヴァイ」には入り込めませんでした。魔女や亡霊が活躍する話です。