笙野頼子「金毘羅」

金毘羅
 これも「ゴシックハート」同様、ミルキィ・イソベの装丁だ。まあ彼女の本ではおなじみなのだけれど、ついついこの小説も「そういえば、ゴシックだよなあ」と思えてしまう。ある意味、超ゴシック小説。なにせ、「自分は金毘羅である」と称する主人公だからなあ。そしてその主人公を、どうしても読者は笙野頼子のイメージと重ねてしまい、ははあ、いろいろ、複雑(という言い方もアレだが)な感情を世に抱いているのだね、とその饒舌ぶりに圧倒されてしまう。といいつつ、その複雑さはけっして他人事ではなく、だからこそ、この小説にゴシックの名を冠しても構わない気がするのです。