木下哲子の髪型

団地ともお』で、今までずっとパーマをかけてたお母さんが、急に髪をストレートにしてしまうという“事件”があったのだけれど(そして以後ずっとそのまま)、あれがこのマンガに与えた影響は測り知れないものがあったと思う。だって、パーマをかけてた頃のお母さんは、掛値なく「お母さん」というキャラに合致していたものの、パーマをとった後の、さらさら髪のこの女性は、決して「お母さん」というキャラと寸分違わぬ一致を見せてる訳じゃないから。(むしろ「木下哲子」という“独特”のキャラを開拓しているといった感じ。)もちろん、ひとりの女性の自立という点で、これを考えればずいぶんと目出度い話にもなろう。が、あれ以来、なんか『団地ともお』は若干妙な具合にねじくれてきたのではないか、という気がしないでもない。オーソドックスからの微妙なずれ。もちろん、その「ずれ」はもともとの小田扉の資質が出て来ただけとも取れるのですが。(「オーソドックス」というとまた少し語弊があるのだけれど。僕はここでこの「オーソドックス」を決して悪い意味で使っているのではない。かといって、お母さんがストレート髪になった『ともお』を悪いと言っているのでもなく、単に、あの髪型の変化がこのマンガにいかなる変化をもたらしたかに注目したい、ということです。単純に、髪形の変化、というより、哲子から「お母さん」というキャラ<記号>を剥ぎ取った小田扉の意図、と言うべきか。)