book

『細雪』(下)

ふう。ようやく蒔岡姉妹の物語に幕が下りたという次第であります。噂通り、ほんと、不思議な幕引きだったなあ。三女雪子の「腹下し」でこの絢爛たる大長編は終わるのだもの。谷崎は、『細雪』を「おおむね予定通りに進ませることができた」と語っているけれ…

『テヅカ・イズ・デッド』

丸善本店のサブカルコーナーで購入。八重洲ブックセンターではどこに置いてあるのかわかりませんでした。(ちなみに、丸善ではまだ『大奥』が置いてないんだよなあ。どうしてなんだろう?) この本、『たけくまメモ』でものすごく丁寧に取り上げられていたの…

『冷血』

連休中は、ずっとこの本に付きっきり。正直、所々眠くならないでもなかったけれど、さすがにね、最後のとこでは、両腕に鳥肌モンでした。いい仕事を残されましたなあ、と一読者としては単純に感じ入る。題材が題材だけに、出版当初は様々な毀誉褒貶を引き起…

まずは訂正

ごめんごめん。先日の日記で「ノンフィクション・ノベル」はカポーティが創始者と書いたけれど、あれ間違い。単に、「その確立に多大な貢献をした」というのが正解らしいです。でも――ちょっと穿った見方をするならば――この噂の出所には、カポーティ自身のミ…

逆無頼

川上弘美の他人への気の遣いようは、ちょっと注目すべきところがあるなあ……。

『ティファニーで朝食を』トリビア

『ティファニーで朝食を』の魅力的なヒロイン、ホリー・ゴライトリーは、映画ではオードリー・ヘップバーンが演じたが、トルーマンにいわせればミスキャストで、マリリン・モンローのほうが適役だった。この不思議なタイトルは、トルーマンが実際に聞いたエ…

『ティファニー』の新訳は?

現在、新訳バージョンの『冷血』(トルーマン・カポーティ著、佐々田雅子訳、新潮社刊)を読んでいる最中であります。この訳者は、ユージェニデスの『ミドルセックス』でも、安定した力業を披露していることから、安心して読み進めることが出来ます。まあ、…

擬似というか何というか

そういえば2000年刊の『裏ヴァージョン』にこんな文章がありましたね。上の「擬似恋愛感情」とちょっとダブる。引用してみます。 まだ本格的な構想を練ってはいないが、三人の仲のよい女子高生がいる。本人たちが初めからそんなふうに意識していたのではなく…

親指Pの修業時代

松浦理英子のエッセイや対談集をここのところ続けて読んでいたので10年ほど前に手に取った本書を再び通読してみる。ちなみに1994年度女流文学賞受賞作品。(当時はそのような賞が存在していたのです。)いやー。意外と覚えてないものだなあ。登場人物はと…

細雪(中)

特に筋がない、というのが「細雪」の定説となっているようだけれど……そうかなあ? 中巻で、にわか浮上してきたのが、四女妙子の恋愛模様。ははあ。若かりし頃駆け落ちまでして(しかも、新聞にまで書きたてられまでして)、いちおう現在も付き合っている金持…

フリースタイルvol.2を買ったよ

巻頭企画・私たちの「少女漫画」。鼎談メンバーにやまだないと、よしながふみ、福田里香を迎えています。 まあ、何はともあれ、よしながふみのこの発言からピックアップしていくべきかな。 〔略〕私、少女漫画って一様に言えるのはやっぱりマイノリティのた…

深読みのタイトル

松浦理英子と笙野頼子の対談集「おカルトお毒味定食」より。松浦理英子の発言を抜粋する。(ちなみに、1994年3月においての対談です。) 私と笙野さんのデビュー時の共通点を発見したんです。二人とも、タイトルからして、これは売れないなというタイトルで…

猫といえば、これですね。

ISBN:4309014046 あ、そういえば、これもあるか。 ISBN:4101010013 これとか。 ISBN:4592880617 忘れちゃならない。 ISBN:4091400019 ちなみに、わたくし、一応“犬派”に属する人間であります。

うえの・ちづこ書店

これだけ読めば、あなたも上野千鶴子とのケンカに勝てる ……か。いや、別に氏とケンカするつもりはないけれど。でも、必要に迫られた際の論理武装用にと、ちょこちょこと物色してまいりました。 買った本。 ゲイ・スタディーズ (ISBN:4791755553) クローゼ…

「細雪」(上)

30を超えて、はじめて手にする。なるほどなあ。前にも言ったけれど、「豪華絢爛」というのは、小説を読み進める上で実に大きな力になりますね。 と言いつつ――ふふー、トイレで独り言を言うおじさんの描写にはかなり笑えました。そりゃ、驚きますよね。いき…

アンチ・ヘテロセクシャル文学

池袋ジュンク堂書店に行ってきました。ひさびさです。そこで「アンチ・ヘテロセクシャル文学特集」なるものをやっていたので、いろいろと物色してまいりました。 記憶に残っているものをリストアップしてみます。(順不同。) 吉田修一「最後の息子」 三島由…

アッコちゃんの時代

まずはナンシー関の「聞いて極楽」(ISBN:4022612339)P.72より抜粋。 数年前から、私の周辺で「A子(もしくはアッ子)という女性(現在二十六歳ぐらい)のことが話題になっている。この女性は十代にして最上恒産の愛人の座をゲット。当時、正式の愛人だっ…

稲垣足穂コレクション(5)少年愛の美学

ここんとこ、この手の本が続いてます。海野弘「ホモセクシャルの世界史」がおもしろかったもんでね。ケルアックの「地下街の人びと」も読んだよ。これにはあんまり感心しなかった……。あと「サテュリコン」とかね。世界最古のゲイ小説。男の子を口説く場面以…

ドリアン・グレイの肖像

わぁ。有名だとか古典だとかゲイだとかそういうのとは全然関係なく、もうむちゃくちゃおもしろいです。惚れますね、確かに。言語を巧みに操る技が通常のレベルを超えてるもの。嘘でもいいです、言われてることが。けれども、その言い方自体に美を認められた…

徹底抗戦!文士の森

「福田コーソン」というのは、はい、「福田恆存」のことです。この本からのパクリ。作中で、 おーんなじF田でも昔の方とはえっらい違いですなあ。 と、現代のF田(K也)を煽ってるのだ。あらら、笙野さん、穏当でないなあ。――なーんていい人ぶりつつ、実…

サロメ(岩波文庫版)

ワイルド初体験。と同時に、福田コーソン(by 笙野頼子)初体験。意外に、といったらなんだけれど、ひじょうにおもしろかったです。「古典読んで眠くならなかった」というだけでも驚きなのに。まあ、やっぱりビアズレーの魅力というのは大きいっすね。好き好…

ヘンタイの哲学――ヒトの性欲と快感のしくみを探る

ちょっとムシャクシャすることがあったので、気晴らしにと買ってきました。とかいって、ほんとは純粋に好奇心で買ってきたんですけどね。何が「気晴らしにと買ってきました」だか。まぁそれはともかく。 いやー、いろいろ勉強になったなあ。世の嗜好のバリエ…

ゲイ文化の主役たち

そういえば、前にこのような本も読んでいたのだった。1997年の本です。今はもう絶版となっているらしい。おもしろいのになあ。「現代のゲイ/レズビアン・アイデンティティの確立に貢献した」、上位100名を順に紹介しています。1位・ソクラテス、2位・サッ…

ホモセクシャルの世界史

ちょっと時間が出来たので、ぱーっと目を通してみました。ホモセクシャルをキーワードに、世界史を概観したような本です。いや、まあ、おもしろかったっすよ。へぇ、あの有名な××もゲイだったんだ、てな興味というのは、やっぱり不滅、というか、別に貶める…

阿部和重対談集

この本て、阿部和重の次回作「プラスティック・ソウル」(山崎まさよしファンの人、怒っちゃいけない)へのプロモーションブックなんだね。至る所にこの本の書名が出て来て、私なんかは単純に、身悶えする程、というのは大げさにしても、少なくとも、「出た…

縦書き横書き

所用で近所の文房具店に寄った際、そういえば、先日読んだ石川九楊「縦に書け!」にあったように、今って縦書きのノートってないのかな、と思って調べてみたら、なるほど、子供用のジャポニカ学習帳等といった所でのみ棲息を許されている様子で、きちんとし…

「風味絶佳」

う、うーん。これは、困ったなあ。あまり、ピンと来なかったっす。山田詠美の短編は、かなり好きなはずなのだけれどなあ。肉体労働者をこの本の一貫するテーマとしたかったらしいけれど、逆に、それが裏目に出たような。最初の「間食」以外は、なんだか、少…

「複雑な世界、単純な法則」

ははあ。なるほどなあ。金持ちはより金持ちになり、人気者はより人気者になる、という、そうした法則を解明した本です。何となく、習慣は人を作る、みたいなフレーズを思い出し、「ああ、こんなだらしない事をしてたら、それこそ金持ちにはなれないよなあ」…

町田康「告白」

なるほど。この題名に偽り無しのマイフェイバリットブック。最近の町田康は、ほんとうに良いなあ、「くっすん大黒」の頃はあまりピンと来なかったのだけれど、と嬉しくなってしまう。読売新聞連載時には載らなかった最後の殺人も含め(にしても、つくづくこ…

「百年の孤独」読了

とりあえず、報告まで。読み終えた直後に思ったこと。ガルシア=マルケス(間に入るのは「・」ではなく「=」らしい。池澤夏樹が「世界文学を読みほどく」で口を酸っぱくして言っていた)は、まだ生きているのだろうか? 何だか、本読み自体に疲れたので、し…